読書レビュー

「死ぬのはガンに限る」らしい⁉

『大往生したけりゃ医療とかかわるな 「自然死」のすすめ』 著:中村仁一 著者は、特別養護老人ホームに勤める医師。 最後まで点滴注射も酸素吸入も一切しない「自然死」を数百例見てきたという。 その著者は、 「死」という営みは本来、穏やかで安らかだっ…

「影裏」沼田真佑 2017年第157回芥川賞(単行本94ページ)

日常生活の中で見聞きするどういう種類のものごとであれ、何か大きなものの崩壊に限り、陶酔しがちな傾向を持つ日浅。そういうものごとに対し、共感ではなく感銘をする、そんな神経をもつ日浅。 東京にある医療用の医薬を取り扱う親会社から岩手の子会社に異…

「むらさきのスカートの女」今村夏子 2019年第161回芥川賞(単行本 160ページ)

うちの近所に「むらさきのスカートの女」と呼ばれている人がいる。 という一文からはじまるこの小説。その後”むらさきのスカートの女”というフレーズは作品中に何回出てくることだろう。 最初の1ページだけでも4回出てくる。 近所のぼろアパートに一人暮らし…

「送り火」高橋弘希 2018年第159回 芥川賞(単行本120ページ)

日本では、非情な暴力を目の当たりにし、後の記憶に残り続けるほど心にショックを受けるような経験を、中学校時代までにする人も少なくないのではないかと思います。 ランドセルを降ろし、学生服を身にまとう頃にはもう、大人とかわらない質の暴力に遭遇して…